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VASE®, M-2000®,
IR-VASE® や VUV-VASE®等、最新のウーラム社の分光エリプソメーターは、補償子(移相子)を装着しています。この論文ではエリプソメーターの光学設計に補償子を設置する方法と利点を述べます。補償子の技術の再検討はエリプソメーターの動作を理解しエリプソメトリーの応用の可能性を広げるのには大変重要です。
移相子(補償子)とは何か?
移相子は、入射した光の位相を変化させる光学素子で、直交した2成分の一方の位相を遅らせます。この位相の遅れは移相子の光学異方性 (no ≠ ne)によって起こります。2つの直交電場はそれぞれ異なる位相速度を生じさせる、異なる屈折率を伝播します。

図1.移相子は2つの光成分間に位相の差を生じさせる
補償子は90度の位相変化を生じさせる移相子です。このため直線偏光の光が入射すると補償子の出射は円偏光となります。
なぜエリプソメーターに補償子を用いるか?
エリプソメトリーで補償子は、測定精度を向上させるために用いられます。回転検光子型や回転偏光子型 (RAEやRPE)は、光学構成が簡素で広い波長領域にわたって高い精度が得られます。しかしながら以下のような限界があります:
1. 右回りの偏光と左回りの偏光の区別がつかない。他の言い方をすればΔの実際の変化量は0度から360度であるが、0度から180度までしか測定できない。
2. Δが0度と180度付近で測定精度が落ちる。
これらの限界は、多くの応用分野では問題になりませんが、ブリュースター角付近での測定が困難でΔが0度や180度付近で精度を求められる場合に役立ちます。例えばin-situエリプソメトリーでは入射角は制限され1角度に固定されます。これによりΔの感度を最大限に出来る領域に入射角を動かすことは出来ません。また極薄膜や透明基板上の屈折率の近い膜等の試料ではΔの感度のある領域は大変狭い入射角領域に限られてしまいます。
消光型のエリプソメーターは、全ての領域でΨとΔを正確に精度良く測定することが出来ます。しかし一般的に消光型の光学構成は、測定に時間を要するために分光では使われていません。
位相変調器型のエリプソメーター(PME)は、0-360度のΔのフルレンジを精度良く測定します。しかし装置の光学構成によって3Ψが0度や45度付付近で精度の問題が起こります。この限界は、ディテクターを2つにした複雑な光学構成を採ることで克服出来ます4。PMEエリプソメーターで使用されている光弾性変調器は、本来波長分散を持った光学素子であり分光測定をする場合は各波長で駆動電圧を厳密に調整されなければなりません。さらに高い変調周波数のために、PME装置では最新のダイオードアレイの分光技術を用いて分光エリプソメトリーデータを同時に(本当の意味の並列信号読み取り)収集出来る装置を構成することは出来ません。
補償子型のエリプソメーターは、ΨとΔ両方のフルレンジを精度よく測定出来ます。
Δ Δの値が0度や180度付近の場合は直線偏光を意味しており、円偏光(Δ=90度)の時にデータの感度が最大になります。補償子を光経路内に設置することで偏光状態を円偏光または円に近い楕円偏光に変換して、いつも感度の高い領域で測定出来るようにします。
ウーラム社では、2つの異なる補償子の光学構成を用いています:
1) 位相調整器付の回転検光子型(RAE)[VASE®とVUV-VASE®]
2) 回転補償子型(RCE) [M-2000®とIR-VASE®]。
位相調整器(Auto RetarderTM)付の回転検光子型(RAE)エリプソメーター
理論的には、回転検光子型(RAE)や回転偏光子型(RPE)の光経路(試料の前か後)に単純に補償子を追加することで「Δ」測定の限界は除去できます。しかしながらいくつかの理由で問題があります:
1) 分光で使用できる波長分散が無い理想的な補償子が存在しない
2) Fresnel Rhombs等の分光で使用できる補償子は、擬似的に色分散が無いだけであり、大きく光軸調整が難しい
3) 補償子の位相差をスペクトル領域全体で正確に校正していない場合や補償子が適切に光軸調整がなされていない場合は、補償子の導入によってエリプソメトリーデータの精度が良くはならずに、むしろ悪化します。
これらの問題があるにもかかわらず、弊社のVASE®やVUV-VASE®は補償素子を高精度のRAEに組込んでいます。この装置では、コンピューター制御のMgF2
Berek波長板を用いて光路内で正確な位相差を作り出しています5。位相差はコンピューターで制御されているので幅広い波長レンジ(150- 1700
nm)で適切な位相差(0-90度)を作り出すことができます。図2と図3にこの装置で収集された入射角可変と分光のエリプソメトリーデータの例を示します。これら例では、0度や180度付近のエリプソメトリーパラメーターΔを正確に測定することができ、それによりポリカーボネート基板上に蒸着された誘電体の膜厚と屈折率、および顕微鏡のスライドガラスの光学定数と表面粗さを求めることができました。

図2a(左)と図2b(右) 位相調整器を搭載したRAE装置で収集された、厚いハードコート(4.35um)をもつポリカーボネートレンズのエリプソメトリーデータΨ(表示無し)とΔ。ΨとΔ(0度付近のデータ)の両方のデータの振動周期と振幅を正確に測定できたことにより正確な膜厚と光学定数(b)を求めることができた。
エリプソメーターの光路内に補償子を装着するもう一つの方法は、回転補償子型(RCE)エリプソメーターの光学構成にすることです。RCE光学構成では、エリプソメトリーデータΨとΔのフルレンジ
(Ψ
=0-90度、Δ=0-360度)で正確な測定ができる、偏光子と検光子が固定であるために入射出射光の残留偏光に影響されない、偏光解消効果を直接測定できるなどの多くの利点があります6。しかしながら分光のRCE光学構成装置が製造されるようになったのはごく最近のことです7-9。この光学構成の利点がよく知られているにもかかわらずRCE装置が無かったのは、幅広い波長領域で理想的に振舞う(位相差が90度になる)機械的に回転可能な補償子を製作することが難しかったからです。最近はこの問題は次のようないくつかの方法でうまく対処されています。
- 特殊な菱形のようなプリズムを用いてフーリエ変換赤外線(FTIR)RCE装置[IR-VASE]が実現されています。
- 補償子の位相差が、波長領域の一部で180度を通過しても(これは標準の波長板を補償子として用いた場合はその位相差が1/λに依存するので避けられなく測定能力は減少するが)、エリプソメトリーデータを収集することが可能になりました。
- 複数素子からなる擬似的に波長分散のない補償子が開発され、厳密な校正方法が確立されました10
[M-2000]。このM-2000は、CCDアレイディテクターを搭載し分光エリプソメトリーデータを同時に収集することができます11。それに加えて光源やダイオードアレイディテクターを変えることで深紫外 (190nm) から近赤外 (1700nm)までの波長レンジをカバーすることができます。

図3a(左)と3b(右) 位相調整器(AutoRetarder)付のVASE装置を使用して測定した、顕微鏡スライドガラスの、多入射角エリプソメトリーデータの正確な測定。これは大変正確な測定で、標準的なRAEやRPE装置では不可能です。
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位相調整器(AutoRetarderTM)付のVASE®とRCEエリプソメーター光学構成は、試料の偏光解消や一般化エリプソメトリー(異方性)さらにミューラー行列測定などの高度な測定も行える能力があります。
偏光解消は、パターン付の試料や膜厚の不均一さその他の要因で起こります。光学モデルの回帰解析では偏光解消を含んだデータは、非理想性を定量化することができます。図4bに、測定光のスペクトルバンド幅と1ミクロンの膜での膜厚の不均一さからくる偏光解消を示します。適切な解析モデルで得られた最良のFittingを図4aに示します。
異方性試料:プラスチック、液晶や立方晶以外の結晶は、G-VASE®(異方性)測定によって正確に解析されます。異方性測定では、エリプソメーターは、標準の偏光比と偏光で誘発された比も測定します。これは、3つのYと3つのDのパラメータ(Y,
Yps, Ysp, D, Dps, Dsp)を各波長で収集することになります。この追加された情報によって異方性物質の複雑さを解析することが出来ます。
ミューラー行列の測定は、試料が偏光解消を示しかつ異方性である場合に役立ちます。
*B. Johs らの著書による"Overview of Variable Angle Spectroscopic Ellipsometry
(VASE), Part II: Advanced Applications." SPIE Proc.Vol.CR72, (1999),
p.29-58からの抜粋
参考文献 |


図4aと図4b M-2000で測定されたSi上の10540ÅSiO2試料の分光エリプソメトリーデータ(a)と偏光解消データ(b)。この偏光解消データをFitするためにガウシアン分布を仮定した測定波長バンド幅7nmと膜厚の不均一性0.44%を光学モデルに取りこんだ。

図5.LiNb基板でのG-VASE®データ。データの振動はp-偏光がs-偏光に、またはその逆に転化されたことによって起こる。G-VASE®測定では、各波長で6つのデータが測定される。 |
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